第6章 AI生成によるデータ収集
フリーフォーム、競合分析、官能評価の3つのモジュールは、LLM(大規模言語モデル)を使ってデータを生成する方法です。操作方法は共通しています。
6.1 カラムスキーマの設定
データ生成の前に、生成するデータの列構造(スキーマ)を定義します。
操作手順:
- 「スキーマ設定」セクションで現在のカラム構成を確認します
- 各モジュールにはプリセット(初期設定)のカラムが用意されています
カラムの追加:
- テキスト入力欄にカラム名を入力(例:「ターゲット層」「技術的特徴」)
- 「+」ボタンまたはEnterキーで追加
- 追加されたカラムが一覧に表示されます
カラムの削除:
- カラム名横の「×」ボタンをクリック
プリセットに戻す:
- 「プリセットに戻す」ボタンをクリックすると、そのモジュールのデフォルトカラム構成に戻ります
フリーフォームのプリセットカラム
- name, description, features, category
競合分析のプリセットカラム
- company, product, strengths, weaknesses, market_position
官能評価のプリセットカラム
- stimulus, visual, tactile, auditory, olfactory, overall_impression
6.2 データ生成の実行
設定項目:
- 生成件数: 生成するデータの行数(例:10, 20, 30, 50件)
- カテゴリ(任意): データのカテゴリを指定(例:「スマートフォン」「カフェ」)
- プロンプト: AIへの指示を入力(例:「日本市場で人気のあるスマートフォンを比較分析してください」)
操作手順:
- 生成件数を選択または入力
- カテゴリを入力(任意)
- プロンプトにAIへの指示を記述
- 「生成」ボタンをクリック
生成中の表示:
- AIがストリーミングでデータを生成し、テーブルにリアルタイムで行が追加されます
- 進行状況バーが表示されます
- 生成中にブラウザを離れようとすると「離脱しますか?」確認ダイアログが表示されます
クレジット消費: データ収集は1回の実行につき2クレジット
6.3 生成結果の確認と編集
生成が完了すると、テーブルに結果が表示されます。
操作:
- 行の除外: 各行のゴミ箱アイコンで不要な行を除外できます(CSVに保存されません)
- 自動コーディング: 「Auto-Code」ボタンをクリックすると、AIが各行にタグ/コードを自動付与します
6.4 CSVとして保存
生成結果をCSVファイルとして保存します。
操作手順:
- テーブルの結果を確認・編集した後、「CSVとして保存」ボタンをクリック
- ファイル名が自動生成されます
- 保存が完了すると、左サイドバーのファイルリストにファイルが追加されます
保存先: CSVはCloudflare R2ストレージに保存されます。プロジェクトに紐づけられ、別のデバイスからログインしてもアクセスできます。
6.5 フリーフォーム — 自由なアイデア出しツール
フリーフォームは、テーマを指定してAIに自由にアイデアや視点を生成させるモジュールです。競合分析のように既存の製品・企業を対象にするのではなく、まだ形になっていないテーマについて多角的な視点を発散的に収集することが主な用途です。
フリーフォームの活用場面
フリーフォームは以下のような「問い」をAIに投げかけ、網羅的な視点のリストを得る使い方に適しています:
社会課題・問題の洗い出し:
- 「SNSの使用に関連して起こりうる問題点を、心理面、社会面、法律面、教育面から列挙して」
- 「高齢者が引退後の生活で直面する可能性のある問題を、経済、健康、社会関係、生きがいの観点で」
- 「リモートワークが従業員のメンタルヘルスに与える影響として考えられる要因を」
アイデア発想・ブレインストーミング:
- 「地方の過疎地域の活性化策として考えられるアプローチを、テクノロジー、観光、教育、産業の切り口で」
- 「子育て世代が抱える日常の不便さとその解決アイデアを」
- 「大学図書館の利用率を上げるためのアイデアを30個」
研究テーマの探索:
- 「生成AIが教育現場に与える影響について、ポジティブ面とネガティブ面の両方から」
- 「循環型経済(サーキュラーエコノミー)を阻害する要因として考えられるもの」
- 「睡眠の質に影響を与える環境的・行動的・心理的要因を」
ペルソナ・シナリオの作成:
- 「健康管理アプリのターゲットユーザーとして考えられるペルソナを、年齢、課題、動機、利用シーンとともに」
- 「新しいカフェを開業する際に想定すべき顧客セグメントを」
カラムスキーマのカスタマイズ例
フリーフォームでは、テーマに合わせてカラム(列構成)を自由に変更することが重要です。デフォルトの name, description, features, category のままでも使えますが、テーマに特化したカラムにすると生成結果の品質が大幅に向上します。
例1: 社会課題の分析
- problem(問題)、affected_group(影響を受ける層)、severity(深刻度)、root_cause(根本原因)、possible_solution(考えられる解決策)
例2: アイデア発想
- idea(アイデア)、target_user(対象ユーザー)、expected_effect(期待される効果)、difficulty(実現の難しさ)、uniqueness(独自性)
例3: 研究テーマ探索
- topic(テーマ)、research_question(リサーチクエスチョン)、methodology(手法)、expected_finding(期待される知見)、relevance(関連分野)
例4: リスク分析
- risk(リスク)、probability(発生確率)、impact(影響度)、mitigation(軽減策)、stakeholder(関係者)
プロンプトの書き方のコツ
フリーフォームの品質はプロンプトで決まります。以下を意識してください:
視点の指定: 「〜の観点で」「〜の切り口で」と分析の角度を複数提示すると、網羅性が向上します
- 良い例:「SNSの問題を、心理面、社会面、法律面、教育面、ビジネス面から」
- 悪い例:「SNSの問題を挙げて」(視点が偏りやすい)
具体性のレベル指定: どの程度具体的なデータが欲しいかを明示します
- 「具体的な事例や数値を含めて」
- 「日本の文脈で」「2020年代の状況を反映して」
出力言語の指定: カラム名が英語でもプロンプトで「日本語で出力して」と指定すれば日本語で生成されます
生成件数のヒント: 件数を多めに設定し(30〜50件)、後から不要な行を削除するのが効率的です
フリーフォームの結果を活用する
生成されたデータは、以下の後続処理に活用できます:
- ConceptMap-Text でモデル構築: 生成データのCSVをモデル&探索に読み込み、アイデア群の構造を可視化
- コーディングで分類: コーディングモジュールでテーマコードを付与し、カテゴリカル変数として分析
- チャットでの深掘り: 生成されたアイデアをチャットに貼り付けて、個別に深掘り議論
- AHPで優先順位付け: 生成されたアイデアを傾向分析(AHP)の選択肢として評価
6.6 競合分析 — 製品・サービスの比較分析
競合分析モジュールは、既存の製品・サービス・企業を対象に、構造化された比較データを生成します。フリーフォームとの違いは、「比較対象が実在する」ことと、プリセットカラムが競合分析に最適化されている点です。
活用場面
- 新製品のポジショニング検討
- 市場参入前の競合調査
- 既存製品の強み・弱み分析
- 投資判断のための業界マッピング
入力例
例1: SaaS製品の比較
- カテゴリ:「プロジェクト管理ツール」
- プロンプト:「日本市場で利用可能な主要なプロジェクト管理ツールについて、機能、価格、ターゲットユーザー、強み・弱みを分析してください」
例2: 飲食チェーンの比較
- カテゴリ:「コーヒーチェーン」
- プロンプト:「日本国内の主要コーヒーチェーンの店舗数、価格帯、ターゲット層、差別化ポイントを比較してください」
例3: テクノロジー企業の比較
- カテゴリ:「生成AIプラットフォーム」
- プロンプト:「2025年時点の主要な生成AIプラットフォーム(OpenAI, Anthropic, Google, Meta等)を、モデル性能、価格、API仕様、エコシステムの観点で比較してください」
カラムのカスタマイズ例
デフォルト: company, product, strengths, weaknesses, market_position
価格重視の分析:
- company, product, pricing_model, lowest_price, enterprise_price, free_tier, value_proposition
技術重視の分析:
- company, product, core_technology, api_availability, integration_ecosystem, scalability, security
6.7 官能評価 — 感覚・体験の記述データ
官能評価モジュールは、五感や体験に関する記述データを生成します。食品、化粧品、素材、空間デザインなど、数値化しにくい感覚的な特性を構造化して記述するために設計されています。
活用場面
- 食品・飲料の味覚評価
- 化粧品のテクスチャー・香り分析
- 素材の触感・見た目の比較
- 空間・環境のアンビエント評価
- UI/UXの感覚的なユーザビリティ評価
入力例
例1: 食品の官能評価
- カテゴリ:「高級チョコレート」
- プロンプト:「代表的な高級チョコレートブランドの味覚、香り、食感、見た目、パッケージデザインについて詳細な官能評価を記述してください」
例2: 飲料の評価
- カテゴリ:「日本酒」
- プロンプト:「代表的な日本酒の銘柄について、香り(上立ち香・含み香)、味わい(甘辛・酸味・旨味)、口当たり、後味、適した温度帯を記述してください」
例3: 空間の評価
- カテゴリ:「コワーキングスペース」
- プロンプト:「都市部のコワーキングスペースについて、照明、音環境、温度、椅子の座り心地、視覚的な開放感、集中しやすさを評価してください」
カラムのカスタマイズ例
デフォルト: stimulus, visual, tactile, auditory, olfactory, overall_impression
食品特化:
- product, appearance, aroma, taste_profile, texture, aftertaste, pairing_suggestion, overall_score
空間特化:
- space_name, lighting, acoustics, temperature, ergonomics, visual_openness, concentration_level, social_atmosphere
6.8 トラブルシューティング
| 問題 | 原因と対処法 |
|---|---|
| 「APIキーが設定されていません」エラー | 通常はシステムキーが使用されますが、クレジットが不足している場合に表示されることがあります。ダッシュボードで残高を確認してください |
| 生成が途中で止まる | ネットワーク接続を確認してください。AIの応答がタイムアウトした場合、ブラウザのリロードで再試行できますが、途中のデータは失われます |
| 生成結果の品質が低い | プロンプトをより具体的に記述してください。カラムスキーマを見直し、AIが理解しやすい列名にすると品質が向上します |
| 「クレジット不足」エラー | ダッシュボードでクレジット残高を確認し、追加購入するか翌月の付与をお待ちください |
| CSVに空欄が多い | AIモデルによって出力のムラがあります。再度生成を実行するか、別のモデルで試してください |