SWOT・TOWS分析とは | 内部・外部環境の整理から戦略仮説の創出へ

SWOT分析(SWOT Analysis)は、企業や事業、プロジェクトを取り巻く状況を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの観点から整理する戦略分析手法です。一方、TOWS分析(TOWS Analysis)は、これらの要因を組み合わせることによって、具体的な戦略の選択肢を導き出す方法です。

SWOT分析は、経営戦略、マーケティング、研究開発、新規事業開発、組織改革など、幅広い分野で利用されています。複雑な経営環境を4つのカテゴリーに整理するだけで分析を始められるため、企業の戦略立案で最も普及した手法の一つといえるでしょう。

しかし、SWOT分析には、4つの枠に要因を列挙しただけで分析を終えてしまうという問題があります。例えば、「技術力が高い」「営業力が弱い」「市場が成長している」「競争が激化している」という記述を並べても、そこから何をするべきかが自動的に決まるわけではありません。

TOWS分析は、この問題に対応します。自社の強みを使って市場機会を獲得するにはどうすればよいか、弱みを補うことで新しい機会を利用できないか、強みを使って外部の脅威に対抗できないか、といった問いによって戦略案を生成します。

SWOT分析が現状と環境を構造化する方法であるのに対し、TOWS分析は、その構造から戦略仮説を創出するための方法です。

ただし、TOWS分析によって作られた戦略が必ず有効であるとは限りません。重要なのは、環境要因の分類から戦略案の生成、評価、検証までを一連の思考過程として扱うことです。

SWOT分析の成立とTOWSへの発展

SWOT分析の歴史は、1960年代の企業における長期経営計画の研究にさかのぼります。2023年に発表された歴史研究では、スタンフォード研究所(Stanford Research Institute:SRI)のロバート・フランクリン・スチュワートらによるSOFTアプローチが、SWOT分析の原型であることが資料調査によって示されています。

SOFTは、Satisfactory、Opportunity、Fault、Threatという観点から、企業の現状や将来の課題を整理するものでした。その後、現在のStrengths、Weaknesses、Opportunities、Threatsという表現が定着していきました。

SWOT分析は、組織の内部要因と外部環境を関連づけるための方法として広まりましたが、4つのカテゴリーを並べるだけでは戦略を具体化しにくいという問題がありました。

1982年、ハインツ・ヴァイリッヒ(Heinz Weihrich)は、論文「The TOWS Matrix—A Tool for Situational Analysis」において、企業の強み・弱みと外部環境の機会・脅威を体系的に組み合わせ、戦略を導き出す方法を提示しました。

現在ではSWOT分析の中に戦略案の作成まで含めることも多く、SWOTとTOWSは必ずしも完全に独立した手法として扱われているわけではありません。しかし、両者を区別することには、状況の整理と戦略の生成という異なる思考作業を意識できる意義があります。

SWOT分析の4つの要素

SWOT分析では、企業や事業の状況を、内部・外部という観点と、有利・不利という観点から分類します。

有利な要因不利な要因
内部環境Strengths:強みWeaknesses:弱み
外部環境Opportunities:機会Threats:脅威

Strengths:強み

強みは、目標の達成に有利に働く内部の能力や資源です。技術力、ブランド、顧客基盤、製造能力、販売網、組織能力、知的財産などが考えられます。

ただし、ある能力が優れているというだけでは、必ずしも戦略上の強みとはいえません。その能力が対象市場や目標に対してどのような価値を持つかが重要です。

例えば、高精度の計測技術は、精度が重視される産業では強みになります。しかし、低価格を最優先する市場では、高精度を実現するためのコストが競争上の不利になる場合もあります。

強みは絶対的な属性ではなく、事業目的や競争環境との関係によって決まります。

Weaknesses:弱み

弱みは、目標達成を妨げる内部の制約や不足している能力です。技術開発力の不足、資金調達能力の弱さ、販売網の不足、組織間の連携不足、特定顧客への依存などが該当します。

弱みを特定する目的は、単に改善点を列挙することではありません。その弱みが、どのような事業機会を制限し、どのような脅威に対して脆弱性を生んでいるかを理解することです。

また、すべての弱みを改善する必要があるとは限りません。外部企業との提携によって補える弱みや、事業の方向を変更することで問題ではなくなる弱みもあります。

Opportunities:機会

機会は、事業の目標達成に有利に働く外部環境の変化や条件です。市場の成長、顧客ニーズの変化、新しい技術の普及、規制の変更、競争構造の変化などが考えられます。

例えば、製造業で設備の予知保全に対する需要が増加していることは、関連技術を持つ企業にとって事業機会になり得ます。

ただし、機会は企業の行動計画と区別する必要があります。

「AIを利用した新製品を開発する」という記述は、外部環境の機会ではなく、企業が実施する戦略案です。一方、「産業用AIの導入コストが低下している」という記述は、外部環境に関する機会の候補になります。

この違いを明確にしておかないと、戦略案を機会として分類し、それを根拠に同じ戦略を導き出すという循環した議論になりかねません。

Threats:脅威

脅威は、事業の目標達成を妨げる可能性のある外部環境の変化や条件です。新規参入、価格競争、代替技術の普及、市場の縮小、規制強化、顧客ニーズの変化などが考えられます。

例えば、海外メーカーが低価格の産業用センサーを大量供給するようになれば、既存メーカーにとって脅威になる可能性があります。

しかし、同じ環境変化でも、企業によって機会になる場合があります。低価格のセンサーが利用可能になることは、センサーを製造する企業には脅威でも、それらを利用した新しいシステムを開発する企業には機会となるかもしれません。

機会と脅威も、外部環境に固定的に備わっている属性ではなく、企業の能力や戦略との関係によって決まります。

SWOT分析を行う前に決めること

SWOT分析で最も重要な作業の一つが、分析対象と目的を明確にすることです。

「自社のSWOT分析を行う」というだけでは、適切な分類ができない場合があります。

例えば、企業全体の経営戦略を検討するのか、特定製品の市場競争力を検討するのか、新規事業への参入可能性を検討するのかによって、強みや弱みの意味が異なります。

同じ技術力でも、既存市場では強みとなり、新規市場では顧客要求を満たせないために不十分な能力となる可能性があります。

また、時間軸も重要です。現在の市場環境を整理するのか、3年後の事業環境を想定するのかによって、機会や脅威の内容が変わります。

SWOT分析を始める際には、対象となる事業や市場、目標、想定期間、競争相手、判断する主体を明確にしておく必要があります。

SWOT要因はどのように収集するのか

SWOT分析では、社内の関係者がブレインストーミングによって要因を列挙することが一般的です。しかし、参加者が知っていることだけを列挙すると、既存の認識を再確認するだけで終わる可能性があります。

内部環境については、技術、人材、設備、財務、顧客、製品、業務プロセスなどに関する情報を調べます。競合企業とのベンチマーキングや、VRIO分析などを利用することも考えられます。

外部環境については、PESTLE分析、競争環境分析、市場調査、技術動向調査、顧客調査などから情報を収集できます。

ただし、集めた情報をそのままSWOTの項目へ転記するだけでは不十分です。分析の目的に対して、どのような意味を持つ要因なのかを解釈する必要があります。

また、SWOT要因には、確認された事実、予測、仮説、関係者の主観的判断が混在しがちです。

例えば、「市場が急成長している」という記述については、市場規模の実績値に基づいているのか、将来の予測なのか、単なる期待なのかを区別する必要があります。

望ましいSWOT分析では、各要因について、具体的な内容だけでなく、判断の根拠、情報源、対象期間、不確実性なども記録します。

具体例:産業用計測機器メーカーのSWOT分析

ここでは、産業用計測機器を製造する中堅企業が、新しい事業領域への展開を検討していると仮定します。

この企業は、高精度な計測・校正技術を持ち、製造業の顧客と長期的な取引関係を築いています。一方、ソフトウェア開発能力が十分ではなく、販売先も既存の産業分野に偏っています。

外部環境では、製造設備の予知保全への需要が拡大し、低価格のエッジAI技術が普及しつつあるとします。しかし、海外メーカーによる低価格センサーの供給拡大や、設備投資の減少というリスクも存在しています。

これらをSWOTに整理すると、次のようになります。

区分ID要因
強みS1高精度な計測・校正技術
強みS2製造現場の顧客との長期的な関係
弱みW1ソフトウェア開発能力の不足
弱みW2販売先が既存の産業分野に偏っている
機会O1設備の予知保全に対する需要拡大
機会O2低価格のエッジAI技術の普及
脅威T1海外メーカーによる低価格センサーの供給拡大
脅威T2主要顧客産業における設備投資の減少

※これは説明のための仮想事例であり、特定企業の実態を示したものではありません。

この表によって、企業の状況が整理されました。しかし、まだ具体的な戦略は決まっていません。

ここからTOWS分析へ進みます。

TOWS分析:4つの戦略類型

TOWS分析では、内部環境の強み・弱みと外部環境の機会・脅威を組み合わせ、戦略の選択肢を生成します。

一般的には次の4つの組み合わせを使用します。

機会(O)脅威(T)
強み(S)SO戦略:強みを活用して機会を獲得するST戦略:強みを活用して脅威に対応する
弱み(W)WO戦略:弱みを補い、機会を利用するWT戦略:弱みと脅威による損失を抑える

SO戦略:強みを活用して機会を獲得する

SO(Strengths–Opportunities)戦略は、自社の強みと外部環境の機会を結びつけ、新しい価値を創出する戦略です。

先ほどの事例では、高精度な計測技術(S1)と予知保全需要の拡大(O1)を組み合わせることが考えられます。

単に高精度の計測機器を販売するだけでなく、その計測技術を設備の故障予兆検出に応用し、保全サービスを含むシステムとして提供するという戦略です。

この戦略では、「高精度な計測技術を持っている」という内部の能力を、「設備の稼働率を高めたい」という顧客ニーズに結びつけています。

ただし、計測精度が高いことと、故障の予兆を検出できることは同じではありません。実際に予兆検出に有効な情報が得られるかを検証する必要があります。

ST戦略:強みを活用して脅威に対応する

ST(Strengths–Threats)戦略は、自社の強みを利用して外部からの脅威に対応する戦略です。

例えば、高精度な計測・校正技術(S1)と海外メーカーの低価格センサーの供給拡大(T1)を組み合わせます。

価格競争で対抗するのではなく、計測精度、校正のトレーサビリティ、長期安定性などを重視する用途に経営資源を集中する戦略が考えられます。

ここで重要なのは、単に「自社の強みで競争する」という一般論ではなく、どのような顧客用途で、その強みが価格差を上回る価値を持つかを特定することです。

WO戦略:弱みを補って機会を利用する

WO(Weaknesses–Opportunities)戦略は、外部環境の機会を利用するために、自社の弱みを改善または補完する戦略です。

例えば、ソフトウェア開発能力の不足(W1)と低価格エッジAI技術の普及(O2)を組み合わせます。

自社だけでソフトウェアを開発するのではなく、外部のソフトウェア企業やAI開発企業と連携し、既存の計測技術にAIによる分析機能を組み合わせることが考えられます。

この場合、弱みを内部で完全に解消することが目的ではありません。外部の技術や能力を利用して、新しい市場機会に対応できる体制を作ることが重要です。

WT戦略:弱みと脅威による影響を抑える

WT(Weaknesses–Threats)戦略は、内部の弱みと外部の脅威が重なって生じるリスクを小さくする戦略です。

例えば、販売先が既存産業に偏っていること(W2)と、主要顧客の設備投資が減少する可能性(T2)を組み合わせます。

新規設備の販売に依存する収益構造を見直し、保守・校正サービスを拡充したり、隣接する産業分野への販売を進めたりする戦略が考えられます。

WT戦略は防御的な戦略として説明されることが多いものの、単なる縮小や撤退だけを意味するわけではありません。収益構造の転換や事業領域の再構成につながる場合もあります。

TOWS分析から具体的な戦略案を作成する

先ほどの事例で生成した戦略を整理すると、次のようになります。

戦略類型組み合わせ戦略案
SOS1 × O1高精度計測技術を利用した予知保全サービスの開発
STS1 × T1精度・信頼性を重視する市場への集中
WOW1 × O2外部AI企業との連携による製品の高度化
WTW2 × T2保守サービスの拡充と顧客産業の分散

ただし、この表だけでは、戦略を実施するために十分な情報が得られたとはいえません。

例えば、SO戦略として予知保全サービスを開発する場合、計測技術が故障予兆の検出に有効であることを確かめなければなりません。顧客がそのサービスに対価を支払う意思を持つかも確認する必要があります。

したがって、TOWS分析から作成した戦略案は、単なる行動計画ではなく、検証すべき戦略仮説として捉えることが適切です。

戦略仮説には、どのSWOT要因を組み合わせたのか、その組み合わせがなぜ有効と考えられるのか、実現に必要な条件は何か、何を検証すれば妥当性を判断できるかを明示するとよいでしょう。

特に、戦略が成立しない条件や、仮説を否定する可能性のある事実まで検討することで、単なるアイデアの列挙から一歩進んだ分析になります。

SWOT要因の組み合わせは機械的に行うべきか

TOWS分析では、強み・弱みと機会・脅威を組み合わせます。しかし、すべての組み合わせについて戦略案を作る必要はありません。

例えば、強みが10項目、機会が10項目存在すれば、SOだけで100通りの組み合わせができます。すべての組み合わせについて戦略を作成しても、有意義な案が増えるとは限りません。

重要なのは、要因間に実質的な関係が存在するかどうかです。

そのためには、単に「技術力」と「市場成長性」を組み合わせるのではなく、技術力のどのような特徴が、市場成長の背景にあるどのようなニーズに対応するのかを考える必要があります。

例えば、ある企業の技術的な強みが「微小な変化を高精度に検出できること」である場合、その抽象的な特徴を利用して、従来の製品用途とは異なる領域の機会を探索することが考えられます。

このように、SWOT要因を単なるキーワードではなく、構造や特徴、作用の仕組みとして捉えることで、より広い戦略案を生成できる可能性があります。

TOWS分析は要因の組み合わせを促す方法ですが、どの組み合わせが有効であるかを判断するためには、さらに深い分析が必要です。

SWOT分析の限界:既知の要因しか扱えない

SWOT分析の重要な限界は、分析者が認識している要因を中心に構成されることです。

一般的なSWOT分析では、経営者や担当者が知っている強み、弱み、機会、脅威を列挙します。外部情報を収集する場合も、既存の事業領域や競争環境について調査することが多いでしょう。

その結果、既知の市場における競争戦略の検討には役立っても、まだ認識していない事業機会の発見にはつながらない場合があります。

例えば、計測機器メーカーが高精度の計測技術を強みとして認識していても、その技術が医療、食品、材料開発などの異なる領域でどのような課題を解決できるかを十分に知らない可能性があります。

SWOT分析では、これらの異分野の用途を機会として列挙できなければ、TOWS分析によって組み合わせることもできません。

つまり、TOWS分析は、与えられたSWOT要因から戦略案を生成するための枠組みですが、SWOT要因そのものが十分に探索されていることを保証するものではありません。

この問題に対応するためには、SWOT分析の前段階、あるいは分析の途中に、新しい機会を探索するプロセスを組み込むことが考えられます。

例えば、自社の技術的な強みを機能や構造、作用原理などの抽象的な特徴として表現し、その特徴が有効に働く可能性のある異分野を探索します。

こうして発見された新しい用途や市場を機会として追加し、TOWS分析を再実行することができます。

SWOT分析を既知の環境を整理する手法として利用するだけでなく、未知の機会を探索し、分析対象そのものを更新するための出発点とすることが重要です。

SWOT・TOWSの定量化

SWOT分析は基本的に定性的な方法です。4つのカテゴリーは分類のための枠組みであり、それ自体が数理的な評価尺度を持っているわけではありません。

例えば、ある要因が「強み」に分類されているだけでは、その強みがどれほど重要であるかは分かりません。また、機会に分類された要因が、実際にどの程度の事業価値を持つかも明らかではありません。

そのため、SWOT分析を定量化するための研究や実務的な拡張が行われてきました。

A’WOT:AHPとSWOTの統合

A’WOTは、SWOT分析にAHP(階層分析法)を組み合わせる方法です。

2000年にKurttilaらが発表した研究では、SWOT要因に対してAHPの一対比較を利用し、要因の相対的な重要度を求める方法が提示されています。

この方法では、例えば、強みの中で高精度計測技術と顧客基盤のどちらが重要であるか、機会の中で予知保全市場とエッジAIの普及のどちらが重要であるかを一対比較します。

これにより、単に要因を列挙するだけでなく、どの要因を重視するかについて定量的な判断を行えます。

ただし、AHPで求めた重みが、その要因の客観的な重要性を証明するわけではありません。また、SWOT要因の重要度が明らかになっても、戦略案の実現可能性や収益性が自動的に決まるわけではありません。

QSPM:戦略案の定量的な比較

QSPM(Quantitative Strategic Planning Matrix:定量的戦略計画マトリクス)は、内部・外部要因を利用して、複数の戦略案を比較する方法です。

一般的なQSPMでは、まず要因の重みを設定します。そのうえで、各戦略案がその要因に対してどの程度魅力的であるかを評価します。

例えば、各戦略案について、重要な外部機会をどの程度利用できるか、強みをどの程度活用できるかを評価します。

得られた評価を重みと掛け合わせて合計することで、戦略案を比較できます。

ただし、戦略案の魅力度を適切に数値化することは容易ではありません。また、総合得点が高い戦略が、実施コストやリスクを考慮したうえで最善の戦略であるとは限りません。

そのため、QSPMは戦略の優先順位を検討するための補助的な道具として利用することが適切です。

SWOT要因と戦略案の対応関係を分析する

SWOT・TOWSを定量化する際には、単純に要因の重要度を計算するだけでなく、どの要因がどの戦略案に関係しているかを分析することも考えられます。

例えば、各SWOT要因と戦略案の対応関係を行列として表し、要因の重要度と、各戦略との関連性を別々に評価します。

これによって、ある戦略案がどの強みを活用し、どの機会に対応し、どの弱みや脅威を残しているかを比較できます。

ただし、対応関係を数値化する場合にも、重み、関連度、実現可能性、期待効果などの意味を区別する必要があります。

また、SWOT要因間に相互作用が存在する場合には、単純な加重和では十分に表現できない可能性があります。必要に応じて、非線形価値関数やChoquet積分などの多基準評価手法を検討できます。

SWOTを数値化すれば客観的になるのか

SWOTの定量化には利点がありますが、数値を設定すること自体が客観性を保証するわけではありません。

例えば、「技術力」を8点、「販売力」を4点と評価したとしても、その数値の根拠が明確でなければ、判断者の印象を数値に置き換えただけになってしまいます。

また、0~10点という尺度を設定しただけでは、8点と4点の差が、6点と2点の差と同じ意味を持つとは限りません。

さらに、強み、弱み、機会、脅威は、必ずしも同じ尺度で評価できるものではありません。

例えば、機会の大きさと脅威の深刻さを同じ数値で表現しても、それらを単純に加算することが適切とは限りません。

定量化する場合には、まず何を測定するのかを明確にし、必要に応じて、重要度、期待効果、発生可能性、実現可能性、影響度などを区別して評価することが重要です。

また、評価基準の重みや得点を変更したときに戦略案の順位がどのように変化するかを、感度分析によって確認することも有用です。

定量分析は、判断を自動的に正しくするものではありません。むしろ、どの判断が結果を左右しているのかを明らかにするために利用するべきでしょう。

戦略案の評価と実行計画

TOWS分析によって複数の戦略案を生成した後には、その中から実行する戦略を選択する必要があります。

この段階では、戦略案の期待効果、実現可能性、必要資源、実施期間、リスク、既存事業への影響などを比較します。

例えば、予知保全サービスの開発というSO戦略は、将来の成長可能性が大きいとしても、ソフトウェア開発能力や顧客の導入意欲などに不確実性があります。

一方、校正・保守サービスの拡充というWT戦略は、成長可能性は比較的小さくても、短期的な収益安定化に役立つ可能性があります。

このような異なる戦略案を、単純な総合得点だけで比較することは難しい場合があります。

短期的な収益確保と長期的な技術開発は目的が異なるため、戦略案を異なるカテゴリーに分けたり、複数の戦略を組み合わせたりすることが必要になる場合もあります。

また、実行計画では、各戦略案について、必要な活動、担当者、資源、実施時期、検証指標などを定義します。

重要なのは、戦略案を採用した後も、当初の仮説が適切であるかを継続的に確認することです。

例えば、新しいサービスの実証実験によって顧客ニーズが確認できなければ、機会として認識していた要因を再評価する必要があります。

このように、SWOT・TOWSは一度だけ実施する分析ではなく、実行結果や環境変化に応じて更新することが望まれます。

SWOT・TOWSの限界と注意点

SWOT分析については、以前から多くの批判もあります。

1997年、HillとWestbrookは、企業で実施されたSWOT分析の事例を調査し、要因の列挙が一般的で曖昧な記述にとどまり、優先順位付けや検証が十分に行われていないことを指摘しました。

この問題は、現在でもSWOT分析を利用する際に注意すべき点です。

第一に、4つのカテゴリーが単純であるため、複雑な事業環境を必要以上に単純化してしまう可能性があります。

第二に、要因の分類が主観的になりやすいことです。同じ事象が、分析対象や戦略によって強みにも弱みにもなり、機会にも脅威にもなる場合があります。

第三に、要因間の因果関係や相互依存が、分類表だけでは十分に表現されないことです。例えば、技術力が製造コストに影響し、製造コストが価格競争力を左右するという関係は、SWOTの4分類だけでは明確になりません。

第四に、時間の経過による変化を扱いにくいことです。今日の強みが、技術革新によって数年後には陳腐化する可能性があります。

第五に、SWOT要因が分析者の既存知識に制限されることです。未知の市場や技術の存在を認識していなければ、それらを機会として分類することはできません。

最後に、TOWS分析によって戦略案を生成できても、その有効性が保証されるわけではありません。要因間の組み合わせには、検証されていない仮説が含まれます。

こうした問題に対応するためには、SWOTを単独で完結した分析手法と考えるのではなく、外部環境調査、内部能力分析、仮説検証、多基準意思決定分析などと組み合わせて利用することが重要です。

SWOT・TOWSと他の思考技法の関係

SWOT・TOWSは、ほかの戦略分析や意思決定手法と組み合わせることで、より体系的に利用できます。

PESTLE分析は、政治、経済、社会、技術、法制度、環境などの観点から外部環境を整理する方法です。SWOTの機会と脅威を発見するための情報収集に利用できます。

VRIO分析は、企業の資源や能力について、価値、希少性、模倣困難性、組織的な活用能力を検討する方法です。SWOTの強みや弱みを評価する際に役立ちます。

AHP・MCDAは、要因や戦略案の重要度を比較するために利用できます。

感度分析は、重要度や評価値を変更した場合に、戦略案の順位や評価がどのように変化するかを調べる方法です。

シナリオ分析は、将来の環境が異なる場合について、機会や脅威の変化を検討するために利用できます。

これらの手法は、SWOT・TOWSを置き換えるものではありません。それぞれ異なる分析上の役割を持ち、必要に応じて組み合わせることで、戦略立案の過程を補完できます。

AI時代のSWOT・TOWS分析

LLMの発展によって、SWOT・TOWS分析の利用方法にも新しい可能性が生まれています。

従来、SWOT分析では、関係者の知識や経験に基づいて要因を列挙することが一般的でした。LLMを利用すれば、分析対象となる事業や市場について、外部環境の要因や内部能力の評価観点を幅広く提案させることができます。

また、ニュース、技術文献、市場調査、競合企業の情報などを収集し、機会や脅威の候補を整理することも考えられます。

ただし、LLMが生成したSWOT要因が正しいとは限りません。一般的な企業に当てはまる内容を、その企業の実態として記述してしまう可能性もあります。

そのため、内部環境に関する情報は利用者や企業データによって確認し、外部環境についても情報源と根拠を明確にする必要があります。

TOWS分析では、LLMがSWOT要因の組み合わせから多数の戦略案を提案できます。

例えば、特定の強みと機会を指定し、それらをどのように組み合わせれば新しい事業機会を創出できるかを探索できます。

しかし、ここでも重要なのは、戦略案の数を増やすことではありません。

LLMは、入力された要因からもっともらしい戦略を生成できますが、それらが実際に有効であるかどうかは、技術的実現可能性、顧客ニーズ、競争環境、収益性などを検証しなければ分かりません。

むしろ、LLMの有用な役割は、SWOT要因の分類が適切か、要因間の関係に飛躍がないか、重要な反証可能性が見落とされていないかを批判的に検討することにもあります。

さらに、LLMを利用すれば、SWOT分析で最初に列挙されていなかった異分野の機会を探索することも考えられます。

自社の技術や能力を、その機能や構造、特徴にまで抽象化し、その特徴が別の技術分野や市場でどのような問題の解決に役立つかを探索します。

このように新しい機会を発見し、それをSWOTへ追加してTOWS分析を再実行することで、従来の枠組みを拡張できます。

AI時代のSWOT・TOWS分析では、既知の要因を整理して戦略案を生成するだけでなく、未知の機会を探索し、分析対象そのものを更新していくことが重要になります。

ThinkNaviにおけるSWOT・TOWS分析

ThinkNaviでは、SWOT・TOWS分析を、事業環境の整理と戦略仮説の創出を支援する基本的な思考技法として位置づけます。

ThinkNavi Freeでは、利用者が強み、弱み、機会、脅威を手入力し、4つのカテゴリーに分類して整理できる機能を提供する計画です。

さらに、登録されたSWOT要因をTOWSマトリクスに引き継ぎ、要因の組み合わせからSO、ST、WO、WTの戦略案を作成できるようにします。

単に戦略案を入力するだけでなく、各戦略案がどのSWOT要因に基づいているのかを対応づけることが重要です。

例えば、S1とO1の組み合わせから生成したSO戦略について、その戦略が成立する理由、必要な条件、検証すべき仮説などを記録できるようにします。

また、SWOT要因や戦略案に重要度を設定する機能を設け、AHPによる一対比較や意思決定マトリクスへ引き継ぐことも考えられます。

これにより、SWOTによる状況の整理、TOWSによる戦略生成、AHPによる重要度の検討、意思決定マトリクスによる戦略案の比較、感度分析による結論の検証という一連の分析を行えるようになります。

LLM活用版では、SWOT要因の提案、外部環境の調査、要因間の関連性の検討、戦略案の生成、戦略仮説の批判的検討などを支援する方向が考えられます。

さらに、ConceptMinerシリーズでは、自社の技術や製品の特徴を抽象化し、異なる産業領域における新しい用途や市場機会を探索することが考えられます。

こうして発見された機会をSWOTへ追加し、新しい戦略案をTOWSによって検討することで、既知の市場を前提とした従来の戦略分析を拡張できます。

ただし、SWOT・TOWSによって作成した戦略案を、実行可能な経営戦略としてそのまま採用するべきではありません。要因の分類や組み合わせには利用者の判断が含まれ、戦略案そのものは検証を必要とする仮説です。

SWOT・TOWS分析の意義は、4つの枠を埋めることでも、それらを組み合わせて多数の戦略案を作ることでもありません。自社の能力と外部環境の関係を理解し、その関係を新しい行動の可能性として再構成することにあります。

コンピュータとAIを利用することで、要因の整理、戦略仮説の創出、評価、検証を一体的に支援し、従来のSWOT・TOWS分析を、より探索的で体系的な思考方法へ発展させることができると考えられます。


関連する思考技法:

参考文献・資料

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  • Heinz Weihrich, “The TOWS Matrix—A Tool for Situational Analysis,” Long Range Planning, Vol. 15, No. 2, pp. 54–66, 1982. 論文
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  • CIPD — SWOT Analysis: Factsheet
  • CIPD — SWOT Analysis Template